安心して下さい、面接に落ちたのはあなたのせいではありません

先般は弊社の面接にお越し頂まして有難う御座います。

厳正なる選考の結果、誠に残念ながら、
今回は貴意に添いかねる結果となりました。

ご足労頂きながら不本意な結果となり、
大変恐縮ではございますが、
何卒ご了承いただければ幸いです。

末筆ながら、貴殿の益々のご活躍を
お祈り申し上げます。

 

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祈られた・・・

 

ここ数年は売り手市場になっているとは言え、2008年のリーマンショック以降に日本での就職活動を経験された方であれば、受験企業から「お祈り」された経験は一度はおありだろう。採用されるかどうかは運や相性の問題が大きいと分かっていても、やはり「あんたはしょぼいです」と言われている気がして気持ちの良いものではない。そもそも活躍しなかったから落ちたのに「益々活躍・・・云々」と言われたり、絶対祈ってないのに「祈ってます」というライトな嘘を疲れると余計に腹が立つものだ。

 

本当に祈っているとするとすごい。「祈り(いのり)とは、神などの人間を超える神格化されたものに対して、何かの実現を願うことである」とwikipediaは言っている。従い、益々のご活躍を祈念するには、①少なくとも神などの人間を超える神格化されたものと②益々のご活躍の様子を確りとイメージする必要があり、①は一般的に信仰心の浅い日本人には骨が折れるし、②は「益々」である以上、これまでの活躍を想定した上でそれを超えるパフォーマンスを想像するという二重の規定を要する。観音様か、スサノオノミコトか、はたまた、トイレの神様か・・・特定の宗教の信者でない限りまずこの神様セレクトに5秒はかかり、活躍のbeforeとafterの想像にそれぞれ15秒を要するのは間違いないだろう。合計35秒。

 

「ええと、田中さんは~、そうね笑顔が素敵だったたね、昔からずっと笑顔だったんだろうねでも、さすがにグループディスカッションでみんなでブレストしている間中ずっと笑顔はさすがにきつかったよね。「ソースは?」って相手の論拠を攻撃しながらの笑顔はやめようね、、、ねぇ、フェイスヨガの神様、、、田中さんにもう少し笑顔の緩急を指導してあげて下さい、心から祈ります」

 

このくらいの感じだ。これを5秒くらいのインターバルを空けて、すべての受験者に対して実施するのが、お祈りという行為である。ワンセット40秒。

 

一部上場の大手日系企業ともなれば、受験者数は1万人規模になる。そこから合格するのはわずか数%なので、1万人前後にこのお祈りを捧げることになるが、この1万人に対して、確りとお祈りを実施すると約111時間かかる(10,000人 x 40秒 ÷ 60(分換算) ÷ 60(時間換算))。お祈りメールは概ね下っ端の1-2人の仕事であるから、一人当たり約55時間、すなわち丸二日超不眠不休ノーシフトのお祈りを二人で実施して初めて、不採用通知が出せるということだ。最近はAIにこの一連の観念的な動きをディープラーニングさせて、よりディープにかつ短い時間でお祈りをする新サービス「ディーププレイ」も登場している。

相次ぐお祈りメールに嫌気がさしてしまった時には、この舞台裏を思い出すことで少しでも溜飲が下るのではないかと思う。参考にしてほしい。

 

 

そういう話ではない。

 

そもそもこの採用と言う営み、特に採用面接なるものがどれだけ意味があるものなのか、私は気になって仕方がないのだ。

 

 

最近、私は学内公式のベンチャー投資コンペのチーム選考委員をやってみた。シリコンバレーに近いという土地柄もあり、ベンチャー投資への学内の一般的な関心は高く、このコンペもビジネススクールを含めた様々な学部からの応募があり、6チームの枠に30チーム近くが応募するという活況を見せた。

 

このコンペはその後に続く地域予選と世界大会への最初の予選という位置づけもあり、選考側としては、地域予選・世界大会で勝てる強いチームを選出することが目的だ。ちょうど必修授業で効果的な採用方法はなにか?というトピックがあり、「自由な質疑形式ではなく、固定の質問を全ての受験者にする」(structured interviewと呼ばれるもの)、「実際に必要とされる作業をサンプル化したものが効果的」と紹介されていた為、実際に面接形式としてそれを取り入れてみた。

 

まず、何がチームの勝利に必要な要素か?を選考委員チームで議論した上で、「ファイナンスの基本的な理解」「その他分野を含めた広範な知見」「それらを説得力ある内容にまとめあげる論理構成力」「チームとしてのやる気とチームワーク」あたりが大事だと考え、それに見合う質問を用意した。また、各質問に対し、一つ一つスコアを付けるようにし、総合点で各チームを比較できる表を作成した。加えて、選考委員4名のうち、最低2名は面接官として入るようにし、得点が個人の感覚に偏らないようにした。

 

 

 

昨日選考が完了。その結果はどうだったか・・・

 

 

ものすごく難航したし、今もその選考方法がベストだったか100%の自信はない上、それがベストだったか調べる術もない

 

 

というのが本音のところ。ざっと考えて以下のような問題がありそうだ。

 

 

<評価の統一性>
まず、面接官全員が統一して全ての受験者を見ていないから、たとえスコアが同じでも同じものとして評価しづらい面がある。例えば、Aチームの面接を田中・山崎が、Bチームの面接を佐藤・山崎が実施し、総合スコアが一緒だったとしよう。この時、山崎個人のスコアがA>Bだった場合、どう判断すればいいのか?本当に実力としてA>Bなのか、それとも、山崎個人の感覚なのか、どっちが正しいという術はない(*)。本来であれば、4人全員で全ての面接をすべきだったが、時間の制約上難しかった。でも、それは企業の面接であれば当たり前のことで、人事部が数千人を面接するなどあり得ないから(普通は社員を面接に駆り出す)、この統一性の問題はいつでも生じるはずだ。極端な話、受験者の視点に立てば、自分と趣味のあう人や甘く評価を付けてくれる面接官に当たればラッキー♪ということだ。

(*)統計的に言えば、数千人を面接官として用意し、スコアの分布を見ればなんとなくどのくらい山崎の感覚がはずれているかを見ることは出来なくはないが、色々あり得ないし、山崎がアホなのか一般人より優れてるのかは以前不明なので意味ない

 

<評価の客観性>
たとえ面接官を統一出来たとしても、どうスコアをつけるか?という点には当然面接官の中でばらつきがある。面白いことに(また、面接官も人間なので当たり前でもあるが)、質問の回答に対するスコアが面接官の間でばらつくことは多々ある。そうすると、面接官全員一致で80点を付けたチームと、スコアのばらつきが大きいが平均すると80点になるチームのどちらを優先すればいいのか?
「ばらつきがある方が異端児だ。一発ホームランの可能性あり」とか「全体的に安定している方が本番でもパフォーマンスは高いだろう」等、それっぽい理屈はつけられるが、判然としない。要は、ある質問に対して、ある回答がGood/Badだという基準があいまいなのだ。あなたの強みは?という聞かれて「私は時間に遅れません。待ち合わせはもちろんのこと、何か約束事はかならずきっちりと履行し、どうしても間に合わない時には事前に調整します」という答えた学生を、当たり前じゃないか?アホか?と評価する人もいれば、基本が出来ていて素晴らしいと評価する人もいるかもしれないという話だ。

 

<質問の有効性>
質問は目的に沿っているのか?という原初的な問題もある。例えば、リーダーの統率力を見る為に、「短い時間軸で、他の人たちを引っ張って何かを達成した経験を教えて下さい」と言う質問を今回の面接で投げかけてみた。これは果たしてリーダーの統率力を測る質問たりえているのか?上記の「評価の客観性」をさしはさむ余地がない程、明らかに良い/悪い回答はいくつかあったが、それは単純にこの質問が「想定内」「想定外」だっただけであり、純粋にリーダーシップがあるかを測っていないのではないかという疑問を拭い去ることは出来ない。特に、本当に想定外だった場合、この質問をした瞬間に「ギクぅぅぅぅうううっ!」という顔をし、回答を練る迄に時間を要し、回答もあまりまとまりがないものになるというケースが多々あったが、それは単純に「準備」の問題であって、実力とは関係ないかもしれない。それでも、ある質問に対して回答の良し・悪しの差があれば、良い方を選ぶに決まっているのである。

 

<目的とパフォーマンスの関連性>
仮に目的に沿った人(ほしい能がある人)を採用出来ていても、実際のパフォーマンスとは一義的な因果関係にないというのは言うまでもない。採用した時点から、本番までの成長、本番での体調、メンタルコンディション、出される課題との相性、はたまたそれまでに揺れ動くチームの人間関係等、様々な要素が絡み合って、最終的なパフォーマンス(この場合、投資コンペで勝つこと)が決まる。会社に置き替えると更に曖昧なことになっていて、そもそも本番はいつかという明確な線引きもないし(毎日が本番、と言える程ニッポンのサラリーマンは緊張感を持っ仕事をしていないと思う)、大規模な分業が前提の働き方では個人の成果も見えにくい。仮に大型プロジェクトを成功させた!という若手がいても、彼は元からそれをやる実力があったのか、入社後に成長したのか、そもそもそれはだれがやっても同じなのか、確かめる術はない。

 

上記を勘案すると、採用活動と言うのは以下のような営みということになる。

・何が成功か定義しづらい曖昧な活動で成功できる人を見つける為に
(いきなり矛盾している笑)

・その成功に必要な能力を定義し
(成功が曖昧なのになんで能力がわかるんだ笑)

・その能力を測れる質問を用意して、受験者に投げかけ
(なぜその質問なんだ、他の質問じゃだめなのか。そもそもなんで質問形式なんだ)

・その回答を、面接官が主観的に判断し
(なんで質問しただけで能力が分かるんだ。スカウターか笑)

・別の面接官が主観的に判断した評価と比べて、対象者の評価を決め
(主観vs主観 笑)

・別のチームを評価したまた別の面接官の主観的判断と比較し
(主観の平均値vs主観の平均値)

・その他諸々を総合的に勘案し採用者を決め、他のクズ共には30秒間の祈りを捧げたのち
(最後は「総合的」でごまかす)

・採用した後はそいつがどんなチョンボをしても「採用のせいだ」と言われる程成功との因果関係は強くないので(いや、部署での育成でしょ?とか他社に比べればマシです、とか言い返そう)、知らぬ顔をしておけばOK、安心して下さい

 

 

という活動だ。

 

 

こう考えると、お祈りメールをもらってもちっとも悲しくないではないか?目的にも手段にも自信を持てない採用活動という暗闇をひた走る採用担当者達は、そんな陰鬱たる日々に少しばかりのカタルシスを求めて日々「お祈り」を捧げているのだ。採用担当者の鎮魂歌、それがお祈りメールだ。

 

***

 

ちなみに、じゃあどうすれば受かりやすくなるの?ということに関して、今回の採用活動を通じて私が感じた重要そうな要素。

 

・時間通りに来る
当たり前だが、結構印象が違う。本件でも、チームメンバーがそろっていないチームと、初めからぴちっとそろっているチームでは、やはり後者を取りたいというコンセンサスが生まれた(やる気を示す指標でもあるかもしれない)。

・ちゃんと集中する
これもスーパー当たり前だが、他の人が発言している時に下を向いている、爪をいじっている等している人は結構目立ったし、他の面接官も大体気づいていた。上記同様印象が良くない。面接で爪をいじることと、本番でのパフォーマンスに逆相関があるかどうかは何も根拠がないが、他の要素が同じ二人の受験者がいた時に、あえて爪をいじっていた方を選ぶ理由もない。

・質問に答える
質問にストレートに答えてくれないと結構いらっとすることを学んだ。笑 例えば、リーダーシップ経験を聞かれた時に、その状況を自体を殆ど説明せずに抽象的な学び(how to motivate peopleとか)を語りまくる人が居たが、それがどんなにすごい内容であっても(実際そいつは200人くらいの部下を率いたと言っていた)、殆ど頭に入ってこない。従い、評価は非常に低くなる。きちんと質問自体に答えること、その上で、自分が言いたいことを重ねていくのが吉だろう。

・ちゃんと準備する
本当に実力と関係があるかは怪しいのだが、爪をいじる話と同様、同じ内容であれば「すらっ」と答えられた方が印象が良い。言いよどんだり、考え込んだりしてしまうのは、それだけで×では決してないのだが、比較論になると、やはりスラスラ回答出来る人の方が高評価になるものだ。少なくとも準備してきたことが伺えるし、準備してきたという事実は一定のやる気の指標にもなる。

・サプライズを用意する
若干飛び道具的だが、要求されている以上のものを何か持ってくるとかなり印象が良い。本件の場合、出願書類を要約・図像化したパワポの資料を持ってきたチームがいて、殆ど全ての質問に対して、「それはページXXにあります通り・・・」と資料に沿って説明をしてくれた。これは相当に印象的で、説明がぐっと分かりやすくなるだけでなく、それだけの時間を投下したという事実が圧倒的な「やる気」感を示していた。このチームは最終的に代表として選出された。

 

年明けにはMBA受験の2 Round、そして、(対象者が読み手にいるか不明だが)春以降には企業の採用活動が本格化する。是非上記を参考に、メンタルヘルスを整えつつ、数多の企業面接で無双して頂ければと思います。