MBA流スピーチの極意

週定例のチームミーティング、クライアントへのプレゼン、はたまた飲み会での司会まで・・・

 

いっぱしのオトナとして生きている以上は、人前でスピーチをすることが日常的に必要になる。その必要性の高さの割に、何度繰り返してもある程度緊張はするものだし(クライアントへの業務提案をおかんとの会話と同じノリで対応することは出来ない)、必ず上手く行く!とった確実な正攻法もない。だから、胎教の一環でパブリックスピーキングの英才教育を受け、生後半年でミルクの配合について母に指示を出し、2歳で保育士とトイレトレーニングの方針を相談し、7歳で小学校の教壇に立ち15歳になると逆に夜の校舎窓ガラス壊して回ったというような英傑を除いては、スピーチに対して何かと億劫になりがちである。

 

スピーチは、人に話をすることで短期的にせよ長期的にせよ何かしらの行動を促すことが目的だから、人と協働しながら大きな成果をあげることが出来る人間の育成を一般的な目標とするMBA課程においても一つの重要な教育的要素となっている。HaasのFull-time MBAでもLeadership Communicationという科目が一年目秋学期の必修科目として設けられており、10名程度のグループで、約2カ月に亘りスピーチの実践を繰り返すことで、人の心に刺さる為のスキル・心構えを鍛えていく。この授業の特徴は実践した後の徹底的な「振り返り」で、

①スピーチ後に必ずチームメイト同士のフィードバックの時間があり
②フィードバックの時間も含めて全てがビデオ撮影されていて
③ビデオを見返しながら毎回エッセイを書く

という方式になっている。このくらい振り返る時間があると、自ずとその瞬間の感触やコツが頭や身体に残りやすく、私自身も確かにこれは効くなぁ、と思った場面がいくつかあった。

 

「見た目9割、中身1割」的なことは良く言われるが、自分のスピーチビデオや他の人のスピーチを聞くにつけ、9割・1割という割合の正しさはさておき、確かに一理あるなと感じる。中身が確りしているのは大前提ではあるが、同じ内容なら見た目が良い方がよりすっと入ってくるのだ。

 

では、その「見た目」とはなんだろうか。いっぱしの大人として生きる皆さまには何らかの参考になるかもしれないので、そのエッセンスを以下にお伝えしたい。

 

 

(1) 姿勢(Posture)

人間は自分で思っているよりも自分の身体をコントロール出来ていない。生まれつきの骨格、筋肉の付き方、これまでの運動歴等によって、立ち方一つとっても個人個人の癖が出てしまうものだ。スピーチをする際はこれがかなり目に付く。ふらふらと歩き回ってしまうのはもちろんのこと、ちょっと猫背だったり、片足に重心が寄っているだけで、聞いている側にははっきりと分かってしまう。ピシっと立って、その場に止まることはかなり難しいのだ。そして、その僅かな違いが印象に大きな差を生む。ふらふらしている人の話はどうしても「自信がなく」聞こえるし、身体が傾いている人はなんだか素人っぽく見えてしまう。

 

(2) 表情(Facial Expression)

顔は、話す人のまさに「顔」なので、聞き手への印象を大きく左右する。特に重要なのは視線だ。聞き手を話に引き込む上で不可欠な要素で、泳いでいるような視線でも、一人を見つめ過ぎてもいけない。一人一人に語り返るように視線を向けつつ、少しずつ移動していくことで、聴衆全体を引き込むことが出来る。

また、顔の角度や笑顔の具合も大切で、上手くバランスを取らないと意図しないメッセージが伝わってしまう。ヤンキーがメンチを切る際の下から上の顎フックにはそれなりの意味があったということだ。

 

(3) 声(Tone, resonance)

声の質感も重要な役割を果たす。重低音の効いた声は威厳を感じさせるが、あまり低すぎてスリムクラブ真栄田状態で何を言っているのかわからなくなる。一方で、高くしようと林家パー子を目指すのも修羅の道だ。

声の高低だけでなく、「音が良く響いているか」も印象を大きく左右する。英語ではresonanceと言うが、胸のあたりで声を確りと響かせるようにすると(当然その為にはピシっとした姿勢が必要になる)、どっしりとした安心感が声に宿って聞き手の耳に心地よく響くようになるのだ。森本レオ方式である。

 

いずれも僅かな違いが大きな差を生む。ただ、これは文章ではなかなか伝わりづらいが、動画をいちいち見て確認するのも面倒だろう。そんな多忙なビジネスパーソンたる皆様に一発でこのエッセンスを提供するべく、これらの「究極系」を静止画でお届けしたい。

 

 

「親しみやすさがスピーチのコツです」

 

 

このシンプルなメッセージを、姿勢・視線・声を意識せずに伝えるとこうなる。

 

 

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(1) 姿勢(Posture)

まず、立っていない。現役6年目のユニクロジーンズのダメージが全体のよれっと感に花を添える。習得率2割程度のソーラン節を加えることで、目指すべきピシっと感はもはや再現不能となっている。
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(2) 表情(Facial Expression)

視線がない。バランスの良い視線を突き詰めた結果、視線は無の境地へと至った。これが世に言う無我の境地、あるいはゾーンである。これにより、強烈なサーブで相手を観客席に吹き飛ばしたりすることが出来、どんな態勢からシュートを打ってもリングに入る上、200人の聴衆を前にしてもまったく臆することがなく全員を一瞬にして話に引き込むことが出来ない。
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(3) 声(Tone, resonance)

ポップ体にピンク。これは2000年代初頭女子高生のプリクラ帳以来の組み合わせであり、最高のresonanceとtoneを持ち合わせた奇跡のヴォイスが聴衆の耳にヴァイブスを刻みこむこと間違いないが、発言内容は「親しみやすさがプリキュアの魅力です」と記憶されることになる。
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こんな具合に、見た目はスピーチの質を大きく左右するのだ。同じ内容をピシっとした見た目で伝えるとこういう感じだ。若干、英会話教材の宣伝の雰囲気を漂わせているが、前者よりはマシであろう。
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最後に、Leadership Communicationの授業がどのような雰囲気で行われるのか伝えるべく、実際の動画を二つ貼り付けたい。1つめは初回の授業で「自己紹介」がテーマ、2つめ4回の授業で「説得する・売り込む」がテーマだった。毎回踏み込んでフィードバックをしあっている様子や、そのフィードバックを踏まえてある程度見た目が改善していく様子が見て取れるかと思う。

<初回>

 

<4回目>