Cleantech to Market (Fall 2014)

Applied Innovationのコース群の一つである、Cleantech to Market (通称C2M、http://ei.haas.berkeley.edu/education/c2m/)について簡単に紹介させて頂きます。

MBAトップスクール各校の中でもHaasが抜きんでて強い分野に、Clean TechnologyやSustainable Energyがあります。これはもともとUCバークレーがエネルギー分野に強い学校である(NHKのバークレー白熱教室もエネルギーについての特集でした)ことに加え、学校が立地しているサンフランシスコ・ベイエリアでは政府・企業・住民が環境に対する高い意識を持っており、それが故に関連産業も非常に発展していることが挙げられます。このような背景から、HaasではClean Technology関連の教授陣や授業が充実しており、この分野をMBAで深く学びたい学生が世界から集まります。

C2Mはセメスターいっぱい(16週間)かけて取組むチームベースのクラスで、エネルギー業界で経営幹部まで経験した教授が2名専任で進めていきます。1年生のコアコースで学んだProblem Finding, Problem SolvingやMarketingなどの知識を、具体的なテクノロジーにあてはめながらExperiential Learningの形で学んでいくというスタイルで、最終ゴールは担当テクノロジーのGo-to-Market Strategyを立案するというものです。16週間の取組みはかなり根気がいりますが、ほぼ毎週なにかしらのテーマや課題が設定されており、目の前の壁をチームでひとつひとつ乗り越えながらアントレプレナーシップのフレームワークやクリーンテック業界のトレンドを学んだり、チームのダイナミクスを体感しながらマネジメントスキルを高めていくというコース設計になっています。エネルギー関係で事業を起こそうとするとどうしても技術オリエンテッドなものになってしまうことが多いので、実際のテクノロジーを用いて起業の予行演習ができる面白いコースだと思います。

これまでのところC2Mは毎年Fall Semesterに開講していますが、チームリーダー希望者は夏休み前に立候補し、教授が面接を通じて選定します。その後、各リーダーのバックグラウンドやパッションなどに基づいて教授が担当テクノロジーを割り当てます。具体的なテクノロジーはUC BerkeleyのEngineering Schoolをはじめ、裏山にある国立研究機関であるLawrence Berkeley National Laboratory (UC Berkeleyとは別の機関)、Cal Tech含む他大学の研究室など多岐にわたり、C2Mの目的にうまくフィットしたものを教授が毎年厳選します。私の参加した2014年は8件が選定されました。各チームは5-6名のメンバーで取組みます。HaasのみならずLaw School, Engineering School, Public Policy Schoolなど含むUC Berkeley全体の大学院からメンバーを募り、リーダーどうしのドラフト会議を経てチーム編成が決まります。

私はクリーンテックを専攻したくてHaasに決めたことや、留学中に何かしらの組織でリーダーを経験することを目標にしていたこともあり、チームリーダーに立候補し幸い教授の面接も突破することができました。また具体的な取組みテクノロジーは、その年のリストの中で”Overcharge Protection for Rechargeable Lithium-Ion Batteries”というものをアサインしてもらいました。クリーンテックの中でも様々な分野がありますが、個人的にはEnergy Storageに強い関心を持っていたためです。チームメンバーはMBA学生4名(アメリカ人の元エネルギーコンサルタント、フランス人の元弁護士、インド人の元不動産ファンドインベスター、自分)とChemistryの博士課程の学生2名(いずれもアメリカ人)の構成となりました。このようにMBA生だけでなく多様なバックグラウンドを持つ大学院生と一緒にプロジェクトに取組むことができるのはアメリカのMBAの魅力の一つと言えるでしょう。

 

前述の通りセメスターはそれなりに長いので、メリハリをつけて取組んでいくためにもいくつかのフェーズに細かく区切られており、大まかな流れは以下のようになっています。

Phase 1 (Technology Characteristics & Initial Hypotheses)

約2週間かけて、自分たちの技術そのものに対する理解を深め、仮説としてのターゲット市場を12つ以上挙げる。

Phase 2 (Testing Hypotheses & Product-Market Fit)

約3週間かけて、各ターゲット市場の深堀りと、それを通じたProduct-Market Fitを検証。その結果としてターゲット市場を2-4つに絞る。

Phase 3 (Market Sizing, Competitor Analyses & Revenue Modeling)

約3週間かけて、絞り込んだマーケットをさらに深堀りしてより具体的な戦略を練る。ここでのツールとして、Business Model CanvasやC2M Core Analysisを学ぶ。我々のチームはscientistの強い要望により、Cost Analysisもスコープに加えた。
Phase 4 (Presentation Slides & Market Reports)

12月上旬に業界関係者などを集めたSymposiumが開催され、C2M各チームが壇上で成果をプレゼン。そして翌週にはそれらをMarket Reportという形でまとめて提出する。これらが最終成果物として評価の対象となる。Phase 4ではC2Mの授業に様々な業界関係者が訪れて各チームのプレゼンにコメントをし、brush upしていく。

 

コースを終えてみて、3単位というクレジットの割にかなり負荷の高い(特にチームリーダーの場合)濃密な内容でしたが、その分だけ得られるものも多かったように感じています。具体的には以下のような点に集約されると思います。

・自分の未熟な英語力をもってアメリカ人たちをマネージするのはかなり難易度が高く、毎週毎週かなりのストレス状態に置かれていたものの、敢えてそういった環境に身を置きながらストレッチを続けることで英語でのコミュニケーション能力はかなり高まった。

・クリーンテックの世界はTechnology DrivenかつCapital Intensiveなのでアントレプレナーにとって参入障壁が高く、かつ外部要因に成長が大きく左右される難易度の高い分野である。学校という守られた環境の中で、具体的なテクノロジーを題材に起業をシミュレーションできたのは非常に学びの多い機会だった。特に膨大なReading Assignmentやケーススタディ、専門家へのインタビューを通じたクリーンテック業界特有の知識や失敗事例の把握はC2Mならではの学びと言える。

・6人チームで半年も活動すると人間どうしの様々なダイナミクスが働くことを体感。実際の仕事では自分にそれなりの権力(最終意思決定権やメンバーのパフォーマンス評価など)が与えられるものの、C2Mのプロジェクトではリーダーに何か具体的な権力が与えられるわけではない中でダイバースなチームをうまく動かしていくのは非常にハイレベルなスキルが求められる。学校のクラスプロジェクトという失敗の許される場で実際に小さなトライ&エラーを積み重ねていく中で自分のリーダーシップスキルの強み・弱みが把握できるし、またもしPower & Politicsなどのソフトスキル系の授業を同時に履修していると、そこでの学びを直接チームプロジェクトで試してみることができるので相乗効果は高い。Venture Capitalやエンジェル投資家がスタートアップを評価する際に、最も重視するのはチームだとよく言われる。今回のC2Mでもテクノロジーはgivenな状態でチームを編成し取り組んだわけだが、やはり与えられた環境の中でパッションを持ちながら鋭いインサイトを導きだし、また都度状況に合わせて柔軟に戦略を軌道修正していくことができるチームは強いと実感。